2011年8月29日 全員協議会

第3次おかやま夢プラン(仮称)素案について

森脇久紀議員の質問

1、情勢の認識について

さっそくですが、まず知事の情勢認識についてうかがいます。

東日本大震災と原発事故は、日本社会全体に大きな衝撃を与えました。いま多くの国民は、一日も早い被災地の復興、原発事故の収束を求めるとともに、「何か役に立ちたい」と立ち上がり、どうすれば未来に希望ある政治をつくることができるかなど、真剣な模索をはじめています。被災地に限らず、すべての地域で、またあらゆる分野で、政治のあり方の根本が問われていると思います。知事は、大震災以後の県民意識の変化をどう認識し、「素案」にどう反映させたのか、うかがいます。

 

続いて「素案」の中身についてうかがいます。

2、福祉と暮らし

県政の原点というのは、「住民の福祉と暮らしを守る」ことだと思います。このことは、県民意識調査のなかでもはっきり示されており、県がその立場でしっかりとりくむことが大事だと思います。基本戦略Tの「安全・安心な地域づくり」には、防災、福祉・医療、暮らしに関する施策が掲げられていますが、どれも重要なものです。同時に岡山県に限らずどこでも実施されている施策ではないかと感じますが、県独自で充実され、全国に誇れる施策があれば紹介していただきたいと思います。

 

 県が県民の暮らしを良くする立場に立っても、国の政治との関係で限界が生じる場合もあります。実際、民主党政権の2年、地方政治との関係ですすんでいることを見ますと、さらなる住民福祉の切り下げ、地域経済と地域社会の疲弊の加速という問題を指摘せざるを得ません。

たとえば、「地域主権改革」と称して、住民の暮らしと福祉のための自治体独自の仕事を切り捨て、保育所・障害者施設をはじめ社会保障や教育などの各分野で国が定めた最低基準さえ取り払うという――これは、自公政権時代、「地方分権」の名で実施されてきた「地方切り捨て」政治を丸ごと引き継ぎ、加速させているもので、「自治体が自治体でなくなる」という事態をいっそう深刻にしてしまう道にほかなりません。また、いま国で議論されている「社会保障と税の一体改革」に、福祉水準の引き下げと国民負担の増大を懸念する声が広がっています。

「素案」作成にあたって、「地域主権改革」や「社会保障と税の一体改革」という現在進行している国政の動きをどう考えたのかうかがいます。

 

3、産業振興

次に、基本戦略V「発展につながる産業づくり」についてうかがいます。本来この項では、地域に根を張って頑張る中小企業、地場産業、農林水産業を直接応援する施策が重要だと思います。

 ところが「素案」に掲げられている施策の多くは、FTA・TPP参加を前提にした内容になっているのではないでしょうか。もともとFTA・TPPは、財界・大企業が要請し民主党政権が丸呑みしたものでした。特にTPPについては、農林漁業、地域産業など日本経済に大きな打撃を与えるだけでなく、雇用や医療制度、食の安全など国民の暮らしにも重要な影響を及ぼします。また、東日本大震災からの復興に深刻な打撃となるものです。

JA全中が中心になってとりくんだTPP交渉への参加阻止を訴える1000万人署名運動は、すでに農業者、漁業者、消費者団体など全国から1121万人の署名が集まり、目標を突破しています。地域経済を守り発展させるためには、政府にTPP参加断念を表明させるまで、たたかいをさらに発展させることが求められています。知事はFTA・TPP構想に対して、どう考えているのか、明確に示していただきたく思います。

 

4、雇用

次に、基本戦略W「豊かで潤いのある暮らしづくり」に記述されている雇用施策についてうかがいます。

以前、景気悪化による「派遣切り」、ワーキング・プアなどが大問題となりました。いままた大震災を「口実」にした大企業による新たな「派遣切り」「非正規切り」、賃下げが、被災地のみならず全国各地でおこっています。

「誰もがいきいき働き活躍できる社会実現」のために、私は「素案」に掲げられた施策に加え、非正規ゆえの不利益をなくす何らかのとりくみも検討することが必要だと考えますが、いかがでしょうか。

 

5、教育

 次に、基本戦略U「将来を担う人づくり」についてうかがいます。

 岡山県はワースト1と話題になった「不登校」「暴力行為」ですが、特に「暴力行為」については近年の発生件数の推移をみてみますと、岡山県でも、全国でも、増加傾向にあります。この10年、新自由主義にもとづく「教育改革」がすすめられ、社会全体では「格差と貧困の拡大」が問題になった時期でした。「不登校」「暴力行為」の増加は、こういう社会情勢によるものが大きいと考えられます。実際、国連子どもの権利委員会「第3回最終所見」では、「高度に競争主義的な学校環境が子どもの間のいじめ、精神的障害、不登校・登校拒否、中退、自殺に寄与しうることを懸念する」と指摘しています。

 一方、「素案」では、「学力の向上」の指標として、「全国学力・学習状況調査の全国順位」を10位以内にすることをあげておられます。確かに「学力低下」が社会問題となりましたが、「学力」というのは単に点数だけで評価されるものではありません。「学力について」知事はどうお考えなのか、お聞かせください。このような順位だけが前面に出てしまうと、「不登校」や「いじめ」、「暴力行為」などにますます拍車をかけることになりませんか、あわせてうかがいます

 

経済のグローバル化に対応するプログラムでは英語教育の強化について言及されました。「教育の目的」は教育基本法にも明記されていますが、「人格の完成」であり「平和で民主的な国家及び社会の形成者として必要な資質を備えた心身ともに健康な国民の育成」、つまり子どもの成長のためです。ところが「素案」に掲げられている教育分野の指標の多くは、「おかやま発展戦略会議」いわば経済界の要請に応えるものとなっています。教育分野からの要請ではないのです。私は、本来子どもたちのためにおこなわれなければならない教育が、経済界に役立つ人材育成へとゆがめられようとしていることに危機感を感じます。知事のご所見をうかがいます

 

6、道州制

 最後に道州制の推進についてうかがいます。

 「素案」では、2020年頃の目指すべき岡山の姿として、道州制の導入と中四国州の実現、そのために「中四国地方における本県の拠点性を高める」としています。そもそも道州制の発信源はどこか。ほかならぬ、これも財界・大企業です。決して国民・県民の要望にもとづくものではありません。

6月20日に震災復興基本法が成立しましたが、復興特区の創設、大規模集約化、企業参入、そして道州制まで見据えた「復興」方針に、農家や漁業者から不安と怒りの声があがっています。道州制というのは、住民の利益に真っ向から対立する道と言わなければなりません。

最初にも述べましたが、東日本大震災後、多くの人々が「何かしたい」との思いから被災者を支援する活動に立ち上がりました。活動の内容はさまざまですが、共通していたのは、「人と人の絆を大切にしたい」との思いでした。「自己責任」で、一人ひとりが分断される社会でなく、みんなで力をあわせるあたたかい社会的連帯を求めている、私はそのように感じています。こうした住民の思いに寄り添い、真に住民の立場に立った県政を日常的にすすめることこそ、災害など緊急時にも住民にあたたかい支援ができると思います。

あくまでも道州制を推進しようとする知事の県政運営の軸足はどこにあるのか、この際うかがっておきたいと思います。

 

知事の答弁

 

 日本共産党の森脇議員の質問にお答えいたします。まず、最初に東日本大震災以後の県民意識の変化等についてでありますが、震災の発生後に実施した県民意識の追加調査の結果では、当初調査に比べまして、防災意識の高まりなどの変化が見られますとともに、多くの県民が人々の絆を大切にした地域社会の実現や、節電の推進などを望んでいるということが確認されたものであります。この結果を踏まえまして、避難対策等の推進や、学校等の耐震化、省エネ型のライフスタイルへの転換を進めるための施策などを「素案」に盛り込んだところであります。

 

 次に、全国に誇れる施策についてでありますが、地震から県民の命を守るために必要な耐震化事業や防災拠点施設の整備などの公共投資で、経済効果も期待できるものを「セ−フティニューディール」として進める中で、新エネルギー先進県としての優位性を生かしまして、防災拠点施設への再生可能エネルギー設備の整備を行うこととしております。加えまして、保育士を養成する大学が多い利点を生かしまして、大学、地域、行政が共同して子育て支援を行います本県ならではの取り組みであります「岡山子育てカレッジ」などが岡山モデルとして、全国に誇れる施策であると考えております。

 

次に、国政の動きについてでありますが、国の「地域主権改革」は全般的には大きく進展したとは言い難いということでありますが、個性と魅力あふれ自立した地域づくりを進めるためには、地方分権改革の推進は不可欠でありまして、「素案」においては地域が自らの責任で決定し、創意工夫を発揮できる真の分権型社会の実現を目指すことといたしております。

 

また、「社会保障と税の一体改革」につきましては、地方単独事業の取り扱いなど具体的な改革の方向にはあいまいな点も多く、今後国と地方の協議の場を通じまして、我々地方の意見が充分反映された制度改革が実現できるように取り組んでまいりたいと存じます。「素案」においては、子どもから高齢者までの全世代を通じ、県民誰もが良質で先進的な保健、医療、福祉サービスが受けることができ、住み慣れた地域で自立して暮らすことができる社会を目指すことといたしております。

 

次に、FTATPP構想についてでありますが、FTAの締結やTPPへの参加は国民生活の幅広い分野に影響がでると懸念する声もあることから、国において参加することの有用性や影響を具体的に明らかにした上で、議論を尽くし決定すべきであると考えております。なお基本戦略V「発展につながる産業づくり」においては、国のFTATPPに関する動向いかんに関わらず、アジア経済の急速な成長等の時代の潮流を踏まえまして、アジアをターゲットといたしました県内企業の海外進出や販路開拓の支援を盛り込んでおりますほか、農林水産業や新分野、新事業に挑戦する中小企業の育成など、中小企業、地場産業、農林水産業を応援するための施策を数多く掲げているところであります。

 

次に、雇用施策についてでありますが、誰もが生き生きと働き活躍できる社会の実現を図るためには、県民一人ひとりが適正を生かし、安定的な収入を得ることが大切であると考えております。このため「素案」では正規雇用の拡大に重点を置き、合同就職面接会の開催による就職機会の積極的な提供や若者就職支援センターによる失業者やフリーター等を対象にいたしましたカウンセリング等を実施することといたしております。これらの施策のほか、県では労働局等関係機関と連携をしながら賃金や労働条件などの労働問題に関する相談に対応しておりまして、引き続き就職支援や雇用の安定等に努めてまいりたいと存じます。ご指摘をいただきました非正規雇用の問題に関しましては、公正な待遇の確保に必要な施策のあり方等について、現在国において検討が進められておりまして、この動向を注視していきたいと存じます。

 

次に、学力についての認識等についてでありますが、学力は知識や技能に加え、課題を発見し、自ら考え問題を解決する力や学習意欲なども含めたものでありまして、本県の将来を担う人づくりにおいて、こうした学力の向上は欠かすことのできないものであると考えております。また、お話の不登校やいじめ、暴力行為等につきましては、県を挙げて学校の落ち着いた学習環境を実現し、子どもたちの学力向上を図ることによりまして、自信ややる気を育て、そのことが問題行動改善にもつながっていくものと考えております。

 

次に英語教育の強化についてでありますが、教育の目的は「人格の完成」を目指すものでありまして、その実現のためには幅広い知識と教養を身につけることなど、教育基本法に掲げられております教育目標の達成が必要であると認識をいたしております。一方で、経済のグローバル化が否応なしに進展する中で、このような社会を生き抜いていかなければならない子どもたちには国際感覚や外国人とのコミュニケーション能力を身につけることが不可欠になるものと考えております。このような認識に立ちまして、「素案」では社会全体で連携して子どもの教育を推進いたしますとともに、世界を舞台に活躍できる人材を本県から輩出したいとの思いを込め、英語力の向上に重点を置いたグローバル人材の育成に取り組む方針を打ち出したところであります。

 

最後に、「道州制の推進」についてでありますが、「素案」では、現在の都道府県制の中で県政の基本目標である「快適生活県岡山」の実現に向け、自立と共同による地域づくりを進めることとしておりまして、その際には人の和を大切にし、県民の県民力を結集しながら生活者の視点に立って、主役である県民や地域が輝く県政を目指してまいりたいと存じます。その上で、地方分権の大きな流れの中で地域の課題を地域自らの判断と責任において決定できるよう、分権型社会のあるべき広域的自治体の姿といたしまして、道州制の導入を目指すものであります。以上でございます。

 

 

再質問

 

 3点再質問をさせていただきたいと思います。

 1点目は、TPPに関わってなんですけれども、「素案」の中ではTPPという言葉、FTAという言葉も入っていないわけですが、「岡山発展戦略会議」の提言を見てみますと、「FTATPP議論等を踏まえグローバル化に対応できる産業としての農業を育成する」ということで、規制緩和や農地利用の集積、企業参入の促進などなど施策例として掲げられているわけですね。その施策例と「素案」に盛り込まれた施策を比較してみますと、うりふたつという状況なんです。

いわば、国民のコンセンサスを得る必要があると知事がおっしゃりながら、まだコンセンサスが得られていないにもかかわらず、これを推進する方向に動こうとしているんじゃないかと疑いをもたざるをえません。それについてどう考えていらっしゃるのかもう一度お聞かせください。

 

 2つめの再質問ですが、「学力の向上」ということについて、私も否定する訳ではありません。知事がお答えされましたような学力というのを子どもたちにしっかりつけてもらうとうのは大事な教育目標です。そう思っております。

しかし、学校現場の中に「順位の向上」ということだけが持ち込まれると一体どうなるのか、大変心配をするわけです。先日の教育委員会を傍聴された方のお話も少し伺いましたけれども、教育委員からも懸念する声が出たというように伺っております。点数で定め、競い合わせるということによる害悪というのは非常に大きいと思います。是非ですね、子ども達が本当に学校に行きたくなる、学校で学ぶ喜びを大きくすることができる、それにつながるような目標への再検討を求めたいと思いますし、またそのためにも、教育分野の方々、例えば教育委員会だとか、全ては難しいかもしれませんが、学校長会だとかそういうところの声もしっかり聞いていただきたいと思っておりますが、いかがでしょうか。お願いいたします。

 

 最後、道州制に関わってなんですけれども、最初にご答弁をいただきました、大震災後の県民意識調査の中で「絆」ということに触れられました。本当に、お互いが助け合う、そういう絆を強くした地域づくりという県民の意識に応えていこうと思いましたら、やっぱり住民に寄り添った行政ということこそ大事になってくると思うんです。ところが道州制というのは逆ですからね。広域行政になって、いわば市町村合併が行われたように、行政が住民から遠のいてしまう危険をはらんでいるわけですから、全く逆行した道ではないかと思います。日頃から、人々の絆を大切にしたお互いが助け合い協力し合える地域社会を作ってほしいという県民の意識と逆じゃないかと、私は思っておりますが、知事はどうお考えになっていらっしゃるのかお聞かせください。以上です。

 

 

再質問への知事の答弁

 

 再質問にお答えいたします。FTATPPに関してのご質問でありますが、「発展戦略会議」に起きましてTPP、こういったものを念頭に置いた施策例というものが示されました。それはそういうことでございますが、しかし一方で先程ご答弁申し上げましたとおり、国のFTAとかTPPに関する動向いかんに関わらずですね、アジア経済が急速に成長してきておる、そういう時代の大きな流れがあります。こういった中でやはり我々として考えていくべき発展のための産業政策、これはいかにあるべきかということを考えた際、先程申し上げましたような様々な施策が必要と考えまして、今回の素案に盛り込んでいるということでございまして、私は先程申し上げましたとおり、TPPFTAに参加するあるいは締結することについてどうこうということを決めて、今回の「素案」を作ったということではございません。「動向いかんに関わらず」ということでございますので、念のためもう一度申し上げておきたいと思います。

 

 次に、教育に関しまして、学力に関して順位だけが持ち込まれるということについてはいろいろ問題があるのではないかとのご質問であります。本県の将来を担う有為な人材、これを育成していくためにはいま申し上げております学力、これだけではなくて社会性とか人間性あるいは健康とか体力、こういったものを合い備えた子どもの育成ということが極めて重要である、これが基本中の基本でございます。ただ、学力につきまして非常に今回の全国の調査が厳しいものであったということでありまして、県民の皆さんの期待というものも学力につきまして、大変大きいものがあると、これに応えていかなきゃいけないということから順位を指標に掲げまして総力を挙げて学力向上に取り組む決意を表明したということでございますが、ご指摘のとおりこれから成案をうる段階におきましては、教育分野の方々いろいろお立場の方もいらっしゃいます、そういった方々のご意見も丁寧にお伺いをしていきたいという風に考えております。

 

 最後に道州制について、「絆」の問題と関連付けての再質問でございましたが、道州制はですね、たびたび申し上げておりますとおり国のかたちを変えようとするものでありまして、いま都道府県が持っております様々な権限、事務こういったものを基本的には住民に身近なものということで、市町村に委ねようということでございます。地域における行政サービスは住民に最も身近な市町村が多様な住民ニーズに対応して総合的に実施することができると、分権型社会の主役は市町村であるという立場で、全体の構図というものを考えているわけでございます。そういう意味におきまして、決して「絆」をより強くしていくという方向から逆行しているというものではございませんで、市町村が中心となって住民に最も必要な政策を住民の皆さんの意見を聞きながら、また住民の皆さんの「絆」を大切にしながら進めていく、そういう多様な地域づくりが可能になってくるものと、このように考えているところでございます。以上でございます。